相続人の廃除

相続支援ラボ

 相続人からすると自分にとって好ましくない相続人に財産を相続させたくないと思う場合があります。その
気持ちを実現させるためには、遺言で他の推定相続人に相続させたり遺贈したりすれば良いのですが、遺留分を
害することは出来ないとされているので(民法902条1項)、どうしてもその者に相続財産を渡したくない
のであれば、その者は相続出来ないこととしなければなりません。そのための制度が相続人の廃除です。
 廃除の制度は、このような個人的なものですから、仮に長男を廃除した場合、二男がいる場合には、相続人は
二男になりますが、もし長男に子供がいる場合には長男の子供は、代襲相続人となることが出来ます。
(民法887条2項)
 また、廃除の申し立ては個人の意思だけでは認定することが出来ないので、家庭裁判所の判断が
必要となります。それが廃除の申し立てですが、廃除の申し立ては生存中でも申し立てることは出来ますが
遺言によっても申し立てることが出来ます。
 生存中に申し立てた場合は推定相続人に廃除の意思が明らかになっていますが、遺言によって申し立てた場合
は、推定相続人が分からないことが多いです。(遺言の内容を推定相続人が知っている場合は、推定相続人に
知られてしまいます)。その場合は老後の面倒を見てもらうなど、遺言者にとって有利な場合も想定され
逆に廃徐の要件が解消してしまうことがあります。
 なお、遺留分を有しない兄弟姉妹に対しては廃除するまでもなく、相続分を与えない旨の遺言をすれば
足ります。適法に遺留分の放棄をした者についても同様です。

1,廃除の申し立て
 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき人)が、被相続人に対して虐待をし
もしくは、これに重大な侮辱を加えたときまたは推定相続人にその他の著しい非行があったときは、
被相続人はの廃除を家庭裁判所に請求することが出来ます。(民法892条)

2、遺言での廃除
 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者はその遺言が効力を生じた後
遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならないこととされており、裁判所において
廃除が認められた場合には、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時に遡ってその効力を生ずるため、
被相続人の死亡した時から廃除したことになります。

3、廃除の取消し
 被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消を家庭裁判所に請求する出来るとされており(民法894条1項)
廃除の取消を遺言でした場合には、遺言執行者は遅滞なく廃除の申出を家庭裁判所に請求しなければならない
こととされており、廃除が取り消された場合には、被相続人が死亡した時から廃除の効果は消失します。
(民法894条2項)

4、推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理
 推定相続人の廃除またはその取消の請求があった後、その審判が確定する前に廃除の申出などをした者が
死亡した場合には、推定相続人は廃除されるかどうか未確定の状態になるので、家庭裁判所は、親族、
利害関係人または検察官の請求によって、遺産の管理について必要な処分を命ずることとされています。
(民法895条1項)
 これは推定相続人の廃除の遺言があった時も、同様です。
 その場合に、他に相続人がいない場合には、遺産を管理する人がいないので、裁判所は遺産の管理人を
選任することとされています。(民法895条2項)
 裁判所から選任された管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならず、目録作成費用に
ついては相続財産の中から支弁することとされています(民法27条1項)。申立人が、遺産管理人を置いて
死亡した場合も同様です。(民法27条2項)
 管理人の権限は管理財産の保存行為に限られており、財産を処分しようとする場合には、家庭裁判所の
許可を得なければなりません(民法28条)。

相続人の廃除の画像1


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