遺産を分けることの難しさ

相続支援ラボ

 遺産については、遺言があれば遺言の定めによって、遺言がなければ法定の割合によって、相続人に
分けられます。しかし、現実的に遺産を分けることは、難しい作業です。
 
(1)遺産の中での不動産の割合の高さ
 被相続人の遺産の多くは不動産です。国税庁によれば、すべての相続における相続財産のうち43%が
土地建物であり、また、総務省によれば、70歳以上の世帯のうち家計資産のうち57%が住宅資産・土地
資産となっています。マイホームを持つサラリーマンなどの一般家庭でみれば、遺産の半分以上が不動産で
あることも一般的でしょう。
 ところが、不動産には、物理的に分けづらいという特徴があります。
(建物は分ける分けるわけにはいかないし、土地の場合も、文筆可能な更地の状態になっていることは稀で
あって、多くの場合は、分けてしまうと道路に面していない土地ができたり、形が悪く有効利用できない
土地になったりします)
 不動産を物理的に分けられないことから、分割後に相続人の共有としておくことも、できなくはありません。
しかし、不動産を共有してしまうと、相続人にとっては自分のものでありながら、実質的には自分だけでは
処分も担保設定もできなくなります。将来の権利関係をかえって複雑にしたうえで、問題解決を先送りに
するだけです。

(2)相続税を現金で納付しなければならないこと
 相続が発生すると相続税を負担しなければなりません。遺産を分配するという観点からは、国(国税庁)は、
最強の相続人といえる存在となります。相続税の納付方法は、基本的に現金です。(物納も認められますが、
要件が厳格であり、容易には認められません)。国は、最も分けやすい財産、かつ、皆が欲しがる財産である
現金を、最優先で求めてきます。相続税のために現金による納税が強いられることから、相続税納付後に
相続人がわけることになる遺産は、不動産などの分けづらい財産になってしまいます。
 
(3)事業用資産の分割
 被相続人が事業を営んでいた場合には、遺産の多くは事業用資産となりましょう。被相続人の死亡後も
事業を継続するならば、事業用資産である自社株や店舗などは、その権利を後継者に集中させることが
必要です。しかし、事業用資産を特定の相続人に分与させるためには、事業用資産以外を、それ以外の
相続人に分けなければなりません。事業用資産以外の財産が多くないときには、後継者以外の相続人にも、
事業用資産の一部の権利を引き継がせざるを得ません。事業用資産の分割の場合は、事業の継続への
配慮という、とても厄介な問題があります。
 遺産を分けることの難しさの画像1


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