相続税の軽減と支払い資産の捻出のための対策

相続支援ラボ

 相続税についてみると、基礎控除額の4割削減によって、これまでめぼしい資産が自宅の土地建物
程度であって、相続税は関係がないと思っていた人たちにも、相続税がかかる時代となりました。
(都市圏に一戸建ての住宅を保有していれば、それだけでも課税対象になり得ます。)
 民法上には遺産分割に期限はありません。遺産分割の話し合いがまとまらなければ、いくら時間を
かけてもよいし、家庭裁判所の手続きを利用することもできます。
 しかし、遺産分割に長期間費やすと、相続税の観点からは、3つの不利益が生じます。
 1つめは、相続発生の10か月後という相続税納付期限になっても、財産の権利の帰属が
決まらず、その財産に対する地位が安定しないことです。相続税の支払いは、期限が相続発生から、
10か月後、現金一括払いが原則であり、10か月以内に分割の協議がまとまらなかったとしても
遺産分割協議の成立をまたずに、いったん法定相続分どおりに相続したものとした申告と納付をしな
ければなりません。法定相続分のとおりに相続したものとして取り扱ったとしても、これは暫定的な
ものであって、後日の調節を要することになります。
 2つめは、分割の協議がまとまらないと、預貯金を下すことが出来ず、相続税支払原資を
得づらい事です。普通、税金支払の原資は預貯金であるところ、名義人が死亡した場合には、預貯金は
凍結されてしまいます。遺産分割を完了させ、必要書類を整えなければ、預貯金を引き出せず、相続税の原資を
確保することが出来ません。分割協議がまとまっていなくても、全員の同意があれば未分割の状態でも
預金を下ろすことを認めてくれる金融機関もありますが、財産の分け方が決まらなくてもめているケースでは、
「そんなことしたら兄貴が勝手に使うじゃないか」など、疑心暗鬼も生まれ、「とりあえず相続人の代表
の口座を作って預金を下ろそう」という提案に相続人の全員の同意を得ることも、容易ではないでしょう。
 預金以外の相続財産を売却してそれで納税すること、相続財産そのもので払うこと(物納)などの検討も必要
ですが、売却の方法や代金の決め方は合意しづらく、物納の要件が厳しいので、遺産分割が終わっていない
段階で行うことは困難です。
 遺産の分割前には、遺産の中から相続税を支払うことは出来ないと考えておくべきです。遺産の分割の
協議がまとまらない時には、相続人自身の預貯金の中から工面していったん納税しなければならなくなります。
 3つめは、相続税負担だ軽減される特例が使えないことです。相続税を支払うことにあたって、
自宅の土地の評価額を8割引きできるという小規模宅地などの評価減や、配偶者にはほとんど相続税が
かからないという特例が定められています。しかし、申告期限まで遺産分割が整っていなければ、これらの
特例を利用することが出来ません。申告期限から3年以内に遺産分割協議がまとまらなければ、多く納めすぎた
税金は返してもらえますが、仮に相続税の支払い期限までに分割の話し合いがまとまらなかったときは、
特例を受けない場合の相続税をきちんと払わなければならなくなります。(申告期限から3年たっても遺産分割
協議がまとまらなければ、そもそも特例を使うこと自体出来なくなります。)
 相続対策として生前から納税資金の準備をしておくこと、および、遺産分割協議が難航しないような準備
をしておくことが有用です。
相続税の軽減と支払い資産の捻出のための対策の画像1


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